日没

東京はクリームソーダの街らしい

6月

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毎日を思う。ゆるやかな下り坂の途中にある工事現場、そこにいる特に何もしてない警備の人。その向こうの畑に挟まれた急な坂を越えると、工具が溢れている車庫にちいさな小屋があって うす汚れたくたびれた犬が水を飲んでいる(もしくは寝ている時もある)。右側には竹が生い茂りその向かいのマンションの前で枯れ葉を掃く清掃員の人。バスに乗る日は5.6駅目で乗車する眼鏡で短髪でパンツスタイルのスーツの女性、席につくとガラケーを開く。ノースフェイスの上着にマンハッタンポーテージのバッグの男性は、乗ってくる時は一人だが降りていくとき必ず友人らしき人と一緒だ。お昼になると少し歩く。小さな事務所の外玄関に大きな水槽があって そこに大きな大きな白い鯉がいる。いつもお腹を空かせているのかわたしが近づくと口をパクパクして 光りの反射で金にも白にも見える鱗とひれを見せてくれる。しゃがみ込んで軽く挨拶をして、また歩き出す。日陰のない道を歩く。最近暑くなってきた。家の扉の前に、一人で文庫本を片手に座り込む中年男性がいる。家族に邪魔にならないようになのか、少し場所を変えて読みたいのか。その家の室外機の前には 空の珈琲缶がいっぱい並んでいた。お店につくと他の商品はほとんど見ない。買う物は一緒だからだ。人がいる通路は避けて歩いて、レジで会計を済ませる。また日陰のない道を歩く。少し汗ばむ首筋を感じるころに いつもの場所についた。

「このベンチは破損しているため撤去させていただきます。」

こう記された紙が今日張られていた。今までもこれからも わたしのことを誰も見ていないし求めてないのに、でももう、わたしの居場所はどこにもないんだって思った。自分でいるとだめで我慢してもだめで努力してもまともになんかなれなくて気まずくなって言いたくないことを言ってその度自分が嫌いになって自信がなくなって言いたいことも言えなくなる。それでも毎日がある。毎日を思う。