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日没

東京はクリームソーダの街らしい

youth

昼間の陽差しがまだ仄かに残っているような街灯を、雨粒ごしのレンズで眺める。その夜に拾った椿の花を左の掌にのせて帰宅した。花弁の裏には一粒の雨露があり、零れないように消えないようにとするわたしの手は少し震えていたかもしれない。もう死んだ花の上に居座るその雫はとても凛としていたけれど、それでも一晩たって見てみると綺麗に消えてしまっていた。泣きたくても泣けない時のことを、わたしは思い出していた。

「ここにはなんでもある」と空を仰いで言った彼女の胸の音を想像してみる。まだ冷える春の夜に薄手のマフラーを巻きながら寄り添う彼と、ポケットに手を入れたままの彼女。気づけばずっとおなじ曲を聴いていた。その曲はカタカナの憶えにくいタイトルで、味気ないギターのアルペジオが鳴り続けている曲で、別れの曲で、風を感じる曲で、

やっぱり別れの曲だった。